儚さは白

白は始まりの色。

ドイツでの思い出

しばらく滞在したヨーロッパ。旅のルートもほとんど決まっておらず、イギリスから帰国しよう程度のプランニングで日本を発った。

正直、ドイツは広かった。どこへ行っても見どころだらけ。人柄も良く、とても過ごしやすいという印象を持った。漠然とした出国前の予定では、ドイツからチェコハンガリー、オーストラリアなどの中欧をぐるっと周った後にイギリスへ行こうと思っていたけれど、早々にそれを諦めた。ドイツをじっくり見てみるのも悪くはないって、そんな感じで。

中世の街並みを色濃く残すロマンティック街道を辿ってみたり、有名なノイシュヴァンシュタイン城を訪れたり、鉄道でEU間の国境も越えたりもした。日本ではなかなか見慣れない街並みに自分が立っていることが幸せだった。

個人的にフュッセンではノイシュヴァンシュタイン城よりもヴィース教会が気に入った。この教会はユネスコ世界遺産に登録されている。教会内部は素晴らしいロココ調の装飾が施されているのだが、とりわけ空気感が好きだった。一応観光地なのでカメラのシャッター音や話し声は聞こえるが、静かなのだ。声を出してはいけないのではないかと思うくらいの神聖なムードが教会中に充満しており、その雰囲気に強く惹きつけられた。

また、ミュンヘンの郊外にあるダッハウ強制収容所を訪れた際に受けた影響は非常に大きい。ナチスの行ったすべての行為を批判するわけではないが、ことこれに関しては擁護できない。それは民族浄化であったり、あるいはレイシズムとも呼べると思うんだけど、収容所で見たものはまさにその現場そのもの。ここで起きた悲劇を人間が起こしたとは到底思えなかった。思いたくなたかったのかもしれない。文章で読んだ以上の現実がそこにはあった。

他にも様々な街を駆け巡ったが、旅のハイライトはやはり盗難だろう。今回の旅の写真が載せられないのもその影響だ。特に思い出深いのは盗難後。数えきれないくらいの親切に何度も心打たれた。気持ちを折ることなく楽しく旅ができたのは現地で出会った人々のおかげだ。

帰国後、あまりの達成感に号泣するかと思ったが、結局涙することはなかった。何のために日頃から涙をためてきたのか。

常に平常心で、冷静でいることはとても難しく、何事にも動じない人間などそうそういるものではない。ただ、冷静さを欠いても先へは進めない。落ち着いて物事を対処することがトラブル解決への一番の近道であるのだと再確認させられた。

旅は良い。非常に良い。