儚さは白

白は始まりの色。

大好きだと伝えたい

 

1周間前のことだ。アルバイトで偶然、噂の女子大生(春から欧州留学する子)と働いた。如何せん、たまたまが多い。

 

 

いつもは早々に帰宅する店長も、この日は事務仕事のため夜まで働いていた。

だからと言うべきか、僕はふたりを飲みに誘った。

 

おそらく予定の都合上、これが最初で最後の機会だった。留学まで多忙な彼女と、夜は働かない店長、そして僕。なんとも奇妙な組み合わせで、皆が「新鮮だ」と口を揃えた。

 

会は盛り上がりに盛り上がった。その数日前に開かれた、バイト先を去る男の子のための送別会よりも会話に花が咲いた。

 

夢を追いかける姿、少し適当なところ、あっけらかんとしていて、なぜか低い自己評価。彼女は僕にとってあまりにも魅力的だった。いや、もともとそのような性格は知っていたのだ。ただ、君のそういう部分が好きだと口に出す度に、僕は彼女に引きこまれていった。

 

平日ということもあり、2次会を終えて3人は解散した。それから1週間、僕は非常に落ち着かなかった。迫り来る学会と、旅立つ彼女が頭にちらつき、毎日のように悪夢にうなされた。

 

そして昨日。彼女と働く最後の日がやってきた。何もかもがいつもどおりだった。自分でも後悔するくらいに。

お餞別のお菓子を渡して別れたが、僕は言いたいことを何も言えなかった。どこかで次の機会があると思っていたのだ。

 

多忙な彼女に次はない。

 

「旅立つから好きになってしまった」のか、「旅立つから好きだと気づいた」のか。僕はどうするべきなのか。これは恋なのか否か。

 

だから3月は嫌いなんだ。次から次へと別れがやってきて、少しの考える猶予もありゃしない。

 

店長は「それは恋だ」と言った。どうなんだろう。ただ、僕はすごく彼女のことが好きなのだ。学会が終わったら言おう。旅行も何もかもキャンセルして、伝えるべきことを伝えないと。

 

僕は、3月が好きになれるだろうか。