「女には向かない職業/P.D.ジェイムズ」 感想
女には向かない職業 (ハヤカワ・ミステリ文庫) (1987/09) P.D.ジェイムズ 商品詳細を見る |
女探偵の名前はコーデリア・グレイ。阿笠博士曰く「コーデリア・グレイ (=灰) とV・I (=あい)・ウォーショースキーで灰原哀」らしいです。
ストーリは、自殺した青年の死の真相究明のために雇われたコーデリアが奮闘するというもの。翻訳調の文章がとても嫌らしく、読了までにかなり時間を要した本です(挫折的な意味で)。でもコーデリアはとても可愛いので訳はどうでもいいです。芯のある女性は美しいですね。
感想は続きから。
美しい女というのはみんなたくましいのよ ― (中略) ― 美とは弱々しく、脆く、傷つきやすいものなのだ。イザベルの感受性は保護してやらなくてはならないのだ。たくましい人間がその役割に当たるのだ。
コーデリアは仕事モードのときは意外と冷静な人ですが、やはり女性探偵なんです。引用文は、ああ!コーデリアは女の人なんだね!と再確認させてくれるものでした。作者が女性というのも関係しているのかもしれません。女性的な視点で進んでいくストーリーは新鮮でした。「でも、この世に住んでいる人々がたがいに愛し合えないのなら、この世を美しくしていこうと努力してなんの意味がありますか!」
犯罪に加担したコーデリアにレミングが言った、「あなたは正義のためとか、そういった抽象的なことのためになさったのだと思っていましたわ」という台詞に対する返事です。もう惚れちゃいます。この真っ直ぐさがたまらないです。「抽象的なことなんか考えてはいませんでした。一人の人間のことだけを考えていました」
ミステリー的にはさほど奥深さはないです。どちらかと言えば、ひたむきに努力するコーデリアに焦点を当てた感じでしょうか。だから、読み進めていくうちに彼女を応援している自分に気付きます。読んでいて気になるのは執拗なほどの描写。とにかく細かい部分まで描かれています、しつこいくらいに。解説の瀬戸川猛資氏も書いている通り、一気に読むのがいいと思いました。
石女(うまずめ)って何だ…と困惑したのがハイライトです。