儚さは白

白は始まりの色。

告白した

春に就職して、初夏に部署へ配属された。希望していた部署ではなかった。大学で研究していた分野を仕事にしたかった僕は戸惑った。人事担当者に「ほんとうですか」と何度も訪ねた。とはいえ、決まったものが覆るものでないことは自分でも分かりきっていた。研修先から移動するために丸一日で荷造りを終えて、僕は上京した。シティーボーイになった。

同じ事業部にはもうひとり同期が配属された。研修時に暮らしていた借り上げのアパートで隣部屋だった彼女とは、ふざけた話もできる間柄だった。関東に顔なじみも少ない僕は、毎週のように彼女と遊ぶようになった。仕事終わりに食事に行くこともあれば、イルミネーションを見に出掛けたこともあった。休みの日にはレンタカーを借りて遠出したり、果物狩りや花火大会にも行ったりもした。気付けばなんでも話せる仲になっていた(と僕は思う)。

いつから好きになったんだろう。最初からのような気もするし、ここ最近のような気もする。

いずれにせよ、少しずつ好きという気持ちが積み重なってきたんだなあと強く思う。だからというか、一緒にいると安心できるし、彼女が笑えば僕も楽しいし、とにかくふたりで過ごす時間が尊いと考えるようになった。

ただ、残念なことに脈がなさそうだった。友達としてしか見られていないんだろうなとはいつも思っていた。これから続く同僚という関係にヒビが入ることを恐れていた。気持ちを伝えていいのかが分からなかったし、いつも喉元まで上がってきた言葉を声に出してもいいのか悩んでいた。告白する機会は何度もあったのに。

先週末、もう誰にも渡したくないと思った瞬間があった。ずっと隣にいたいと思った。とにかく告白したくなった。いつもふたりで食べている社食の時間に、僕は唐突に好きだと伝えた。彼女は不意打ちすぎると答えて大笑いしていた。僕もつられて笑ってしまった。拍子抜けしてしまうくらい、締まらない告白になってしまった。

ちなみにそのとき、口周りを黒くしながらイカスミカレーを食べていた彼女は格別に素敵だった。

ちょっと考えてくれると嬉しいと伝えたとき、僕の手はなぜか痺れていた。

あああああ!頼むよ恋の神様!この気持ちを成就させてくれ!!